総長は、甘くて危険な吸血鬼
寮まで一気に駆け上がってドアの前でやっと息を整えた。
なんとなく寮まで逃げてきちゃったけど、今さら気づいたことがある。
…そういえば私、赤羽くんと同じ部屋だった。
逃げ場、ここじゃなかった。
後ろを確認しながら来たから赤羽くんは追いかけて来てないと思ってたのに、少し経ってから寮の扉が開いた。
「ちょっと、何で逃げんの」
『赤羽くん!?』
「同じ部屋なんだからここに逃げても意味ないし」
それはそう。だけど心臓が落ち着かない。
赤羽くん、何で追いかけてきたの…!!
……怒ってる?
もしかして私、気に障ること言っちゃったかな…
『へ…?』
脳内で言い訳を探していたら、私を捕まえるように正面からぎゅっと抱きしめられた。
…胸板の硬さ、シャツの冷たい布地、肩口に落ちる低い吐息。
いきなりの事に理解が追いついていなくて身体が硬直した。
「……ごめん。」
そのまま耳元で、落とすみたいな声。
今までの刺々しさがが嘘みたいに柔らかい。
…この優しいトーンの声は、初めて聞いたかも。
『………え、っと…何が?』