【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『はぁっ………はぁ……っ』
廊下をなりふり構わず全力失踪し、寮の扉をすり抜けるようにして入る。
バタン、と勢いよくドアを閉め、その場に崩れ落ちるようにして背中を預けた。
び、びっくりした………!!
でも、なんとなく行き場がなくて寮まで逃げてきたけど……ここで私は、恐ろしい事実に気づいてしまった。
…………私、赤羽くんと同じ部屋だった。
逃げ場、ここじゃなかった。
ガチャリ。
静かな空間に、無機質なドアノブの音。
『ひぇっ!?』
情けない声が出るのと同時に、重厚な扉が開く。
そこに立っていたのは──息一つ乱していない、赤羽くんだった。
「ちょっと、何で逃げんの」
『あ、赤羽くん!?』
「同じ部屋なんだからここに逃げても意味ないし」
正論すぎる突っ込みに、ぐうの音も出ない。
それはそう。まさにその通りなんだけど!
でも、目の前に立つ彼の姿を見た瞬間、心臓がさっきとは違う理由でうるさく跳ね始めた。
ていうか…なんで追いかけてきたの……!?
やっぱり怒ってるのかな。
私が調子に乗って偉そうなことを言ったから?
頭の中でぐるぐると言い訳と謝罪の言葉を探していた、その時。
視界がふっと影に覆われた。
『へ…?』
思考が停止する。
正面から強く引き寄せられ、私は赤羽くんの腕の中にすっぽりと閉じ込められていた。
…胸板の硬さ、シャツの冷たい布地、肩口に落ちる低い吐息。
いきなりの事に理解が追いついていなくて身体が硬直した。
え……えっ!? な、何、これ、どういう状況……!
あまりに突然すぎる出来事に、理解が全く追いつかない。
全身の血が逆流したみたいに顔が熱くなり、体がカチコチに硬直してしまう。
「……ごめん。」
そのまま耳元で、落とすみたいな声。
今までの刺々しさがが嘘みたいに柔らかい。
…この優しいトーンの声は、初めて聞いたかも。
『………え、っと…な、何が?』