総長は、甘くて危険な吸血鬼
「まさか、あんな大事になるなんて思ってなかった」
腕の力は強いのに、乱暴じゃない。
不思議と安心する暖かさだった。
抱きしめられたまま、赤羽くんの言葉が胸の奥に落ちてくる。
「初めてなんだ、血を吸いたいって思ったのも美味いと思ったのも、……俺に、同級生として普通に接してくれたのも」
『…待って待って、一体何の話?』
いまいち話の内容が分からない。
けど、何か伝えようとしてくれている事は確かだった。
「俺の周りに来る奴は吸血鬼としての俺を求めてるだけで、顔とか地位とか所詮それくらいしか見てない、醜い心が見え見えの奴ばっかで、だから女は嫌いだった。…けど、胡桃は俺が生徒会長で吸血鬼って知っても態度を変えなかった。」
『赤羽くん…』
「………今まで関わってこなかったから、女の扱いなんて分かんないんだよ」
…つまり、え、どういうこと。
「だからみんなの前であーやって宣言すれば胡桃はきっと逃げられないし、…もし周りに何か言われても、お前が助けを求めてくれたら俺が釘を刺しに行くつもりだった。」