私を、甘えさせてください
「カンパーイ!」


冷えたスパークリングワインを片手に、お皿に盛られた何種類ものカルパッチョをつまむ。


「うわー、美味しい!」

「ですよね! このお店、最近できたばかりなんですけど、すごく人気なんですよー」

「ありがとう、嬉しい。誘ってくれて」

「いえいえー。課長、このところ少し元気ないですよね。何かあったんですか?」


普通にしていたつもりだけれど、勘のいい相澤さんには分かってしまったか。


「うん、何だか短期間でいろいろあって、気持ちがついていかなくて」

「それって、本部長や井川課長のこともですよね?」

「そうだね。何かと巻き込まれてる感じ」


そう言うしかなかった。

当事者ではなく第三者だと装わなければ、空川さんのことを口にするのも辛かったから。


「ね、相澤さん。そういえば、聞いてもらいたいことって何?」

「あ、そうそう。私、実はJHコンサルに仲のいい大学の友人がいるんですけど」


JHコンサルは、空川さんの前職の略称だ。


「その子の話だと・・・・」

「うん」

「本部長、クビになったみたいなんですよ!」


思わず小さなため息が出た。
またこの話か・・と。

とはいえ、話し始めて勢いづいている相澤さんを止められるわけもなく。

カルパッチョに続いてサーブされたチーズの盛り合わせをつつきながら、うんうんと相槌を打っていた。


「・・・・らしくて、どうも本部長が直接の原因じゃないって言うんですよ」

「えっ?」


若干聞き流しモードに入っていた私は、突然出てきた核心めいたワードに、思わず反応する。

直接の原因じゃ・・ない?


「それ・・どういうこと?」

「もともと本部長のことを良く思っていなかった新しい上司が、理由を付けて潰しにかかったんじゃないか・・って」

< 50 / 102 >

この作品をシェア

pagetop