私を、甘えさせてください
思わず耳を傾けたものの、また噂話だ。

尾ひれがつくのか、必ず新たな情報が付いてくるから困りものだ。


「相澤さん・・本部長の話はもういいじゃない。違う話をしようよ」

「それもそうですね。あ、次は何を飲みます?」


興味が無いと言ったら嘘になる。

そこに、私の知らない事実が含まれているかもしれないし。

ただ、その噂を確かめたくなったり、その噂自体に振り回されるのに、もう疲れていた。


空いたグラスを眺めながら、ふと思った。

いったい、何が真実なんだろう・・・・と。

誰に何を聞いても、振り回されるばかりだ。


はぁー、と息を吐く。
出るのはため息ばかりだ。


「課長、病んでますよ。さっきから何度もため息ばかり」

「本当だよね。自分でも嫌になる」


苦笑しつつ、新しく注がれたワインのグラスを傾ける。


いっそ、どこかに逃げてしまおうかな・・・・。

それもアリな気がした。


「じゃ、課長また明日。お疲れさまでーす」

「うん、お疲れさま」


相澤さんと別れて、電車に乗った。

流れる景色を見ながら、またため息が出る。


最寄駅に着いたものの、真っ直ぐ帰る気にならず、明日の朝のパンでも買おうとコンビニに入った。

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