極上の愛に囚われて
「もちろん、調べたよ。そうしたらガス田は地殻の変動のせいで底をつきかけている事が分かったんだ。あと一年もすれば彼女の実家の会社は、株が下落し始めるだろう。倒産するのは免れない」
だから、小栗の総意の離婚なんだ……。彼女は知らないのかな。
企業の事情に翻弄される結婚なんて、お互い辛いだけだ。政略結婚なんて、なくなればいいのに。
「これで、ようやく、沙雪にプロポーズできる」
彼はポケットから小さな箱を取り出して、パカッと蓋を開けた。
ビロードの台座には、煌めく宝石のついた指輪がある。
「僕と結婚してくれないか」
別れ話をされると覚悟してきたのに、プロポーズされるなんて。予想を超える展開にまごまごするばかりだ。
「え、でも、私でいいの? だって、私はガス田も、資産も、なにも持ってない庶民だよ?」
実家はごくごく普通のサラリーマンだ。うれしいけれど、絶対に、小栗の家に反対されると思う。
「父の了解は取ってる。今回の事態で懲りたみたいだ。彼女とは一日も一緒にいなかったと知って、普通の女性と結婚して子を授かれとの命令だよ」