策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「ヤマモモの花言葉も聞きたいですか?」
 歩きながら仰ぎ見ると、見下ろす輝く目と目が合った。

「またか。教えたいというより、言いたいって顔だ、言ってみろ」

 覗き込む卯波先生の瞳を、まっすぐに見つめたら、優しい瞳が私の瞳と甘く溶けるほど絡み合う。

「ただひとりを愛する」
 私の言葉に、真顔がふんわり優しい微笑みに変わり目尻が下がる。

「俺たちの一途な愛にぴったりだ。結婚のときや子どもが生まれたときの記念樹は、花言葉で決めるのはどうだ?」

 なんて素敵なの! 卯波先生って凄い!
 私をロマンチックな気分にさせてくれるんだもん。

 私の気持ちは、すでに卯波先生にそっくりな、かっこいい赤ちゃんを抱っこしている。
 こんな幸せに浸れるなんて。

「賛成です。赤ちゃんの顔を見て、ぴったりな木を選んで花言葉を贈る。今からとっても楽しみです」

「がんばるよ。桃と、まだ見ぬ俺たちの子どもたちのために」
「子どもたち(・・)
「ああ、そうだ。三人は欲しい、四人。や、五人か。桃となら、にぎやかで楽しい家庭が築ける」

「卯波先生が人生に現れて、私は輝きはじめた、萌えても責めないで」 
「本当に口が甘い」

 歩を進める卯波先生が口角を上げて、肩を抱く右手が、愛しげに私の髪を撫で下ろす。

「責めるもんか。桃の萌え方は、色鮮やかな緑が踊り出すように芽吹きそうだ」
 顔を近づけてきて耳もとで囁かれたから、くすぐったい。

「また違う、甘くて、とってもいい香りがしてきた」
 卯波先生を仰ぎ見ていた視線を移し、香りのするほうを見た。

 高く長いアーチに、つるを絡めつけながら伸びていく姿は、まるで羽衣をまとったような美しさで目が奪われる。

「羽衣ジャスミンだ、見られるなんて嬉しい」

「羽衣ジャスミンを知っているのか。この香りは、金木犀にバラの香りを足した感じと言われている。本当に花が好きなんだな」

「花言葉は何個かありますが、優しさを集めてが好きです」
「この花に相応しい花言葉だな」
「優しさを集めて。まるで卯波先生みたい」

「インドでは若い女性は、恋人から贈られた羽衣ジャスミンを髪の毛に編み込み、愛の証しとするそうだ」

 そっと私の髪の毛に触れると、手櫛で髪を整えてくれるから、気持ちよくて眠くなりそう。

「そのまま、じっとしていろ」

 羽衣ジャスミンを一輪摘むと、卯波先生は獣医の本領を発揮して、器用な手さばきで丁寧に編み込んでくれた。

「とても似合っている。きらめく髪に白い花が映えて眩しい。負けない白さだ、この透き通るような真っ白な肌に」

 私の指先から肘まで下からなぞるように、そっと這わせてくる卯波先生のしなやかな指の動き。

 頭の芯は痺れて、気が遠くなりそうなのに、体は敏感に卯波先生を感じて耐えきれない。

「ん」
 息を吹き込んだ声が漏れてしまった。
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