策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
 ここで暮らしたら太りそうなほど、たくさんいただいた。

「お腹いっぱいになったか?」
「ありがとうございます、お腹いっぱいです」

「母の料理もおいしいが、初美さんの料理もおいしい。子どものころ、初美さんに料理を教わるのが楽しくて、作ることが好きになった」

「おいしかった、卯波先生の料理もおいしくて大好きです」

「桃には人を動かす才能がある、また俺は桃のために料理を作りたくなる」

 優しい笑顔は、ゆったりと二ミリくらい口角を上げるから、私はその何億倍も口角を上げて、頬もゆるゆるに緩ませた。

 食後のドリンクを初美さんが運んできてくださり、ようやく周りに目がいく。

 恥ずかしながら、お腹がぺこぺこで食事と卯波先生しか目に入っていなかった。

 壁画飾りの絵画が数点、品よく飾られている。

 ごちそうさまをしたテーブルに、ナプキンを置いた。

「リビングルームに行こう」
 椅子を引いてくれた根崎さんに、お礼を言い卯波先生のうしろをついて行く。

「両親が来たら、リビングルームにいると伝えて」
「かしこまりました。お飲みものは、いかがなさいますか?」

「ありがとう、両親が来てからで。それと、もう下がって大丈夫」
「かしこまりました」

 根崎さんの会釈に私も会釈をして、卯波先生の歩幅に合わせるように隣に並んだ。

「食事をしたら、別室に移るんですか?」
 これが気になって、卯波先生に聞きたかったから、歩く歩幅を必死に合わせたの。

「違う目的で使用する場合には、その設備が設置してある、他の部屋へ行けばいいだけのことだ」

 は、はあ、そうですか。凄いわ、そんな部屋数、うちにはない。

 そういえば、玄関もごちゃごちゃ飾り立ててなかった。

 ひとつの部屋に飾り立てる必要がないほど、飾る部屋がたくさんあるってことね、凄いな。

 部屋を出るまでに歩きながら、けっこう会話が長くできるって、いったいどれだけ広い部屋なの。

 廊下の幅が、一般の家の間口ほどの長さはある、なにこの家は。
 廊下だけでも余裕で住めるし。

 お風呂場やトイレも、きっと住める大きさだと思う。
 なんなら、湯船だけで住めそうなイメージ。
 もう、なにもかもが規格外だから笑っちゃいそう。

 リビングルームの扉は、外国製なのかな。

 扉は長くて大きく、複雑な細かい模様が編み目のように彫ってある。

「初美さん、お掃除するの大変そうですね」
 思わず、庶民目線なことを呟いてしまう。
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