策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「シーリングファン、これのおかげだ」
 天井に視線を移し、すぐにまた私と視線を合わせてくる。

 南国の大きな扇風機みたいなあれね。名前があったんだ、覚えられない。

 扇風機みたいなのを循環させることで、快適なんだって。

「自然の風に似た空気の流れができるから、心地いい」
「早く暖炉と天井の体験したいです」

「好奇心旺盛な目が、さらに輝き出した。他の部屋にもあるから、寒い時期には泊まりに来て暖炉にあたろう、二人きりで」

「なんてロマンチックなの」
 私の顔からは、隠しきれない柔らかな微笑みが浮かんでいるでしょ。

 俯いていたら、急に背中も頬も温かくなったから、驚いて息が止まりそう。
 卯波先生ったら、うしろから抱き締めるから。
 
 抱き締められたら、驚くなんて最初から知らなかったみたいに、心が安心感でいっぱいになって、私を包み込む長い腕の中に身をあずける。

「部屋全体がゆっくりと深く染み入るように暖かくなるのと、燃える炎を見ているのは最高にいいものだ」

 頬に軽くキスを降らせたと思ったら、そっと私から離れ、こんなに熱くさせておいて何メートルも先のソファーに行っちゃった。

 卯波先生ってロマンチストなのかな。心を許した相手に対して限定で。
 その特別感がたまらなく嬉しい、私だけに見せる表情やしぐさ。

 ソファーに座る卯波先生を愛でていると、自然と周りの景色が目に入ってくる。

「広いですし、超高級ホテルのスイートルームみたい、行ったことないけど」

 もうどこを見ても、ため息しか出てこない。

「日当たりいいですね、気持ちいい。木も花もたくさん見えますね、ずっとずっと遠くまで」

 南向きの掃き出し窓は、丸いアーチ状の真っ白な窓枠で、窓の外には額縁に入った絵のような美しい噴水が見えた。

 あれ漆喰細工でしょ、いつの時代よ。噴水も漆喰って。
 ため息だけで言葉がででこない。

 当時ヨーロッパから職人さんが来たのかな。
 そうでしょ、だって当時は日本の建造物になかったはずだよ。
 
 そういえば、エントランスホールの壁も漆喰だった。由緒正しい家柄なんだ、凄い。

「さっきから漆喰やヨーロッパの職人って、なぜ詳しいんだ?」
「本で見たんです。本の中から家が飛び出してきた」

 そんなことより、カーテンは重厚で品がある赤のクラシカルなベルベット地だよ。
 まるで王宮に迷い込んだみたいに華やか。

 下から上まで仰ぎ見てしまった。こんな横幅もあって長いカーテン見たことない。
 
 カーテン留めの飾りはゴールド。これは、むやみやたらに触れられない。
 いかにも高級そうで指紋つけたらダメなやつ、きっとそう。

「まずは座れ」
 遠くに座りながら、“ここに来て座れ”と合図をしてくる。

 わかった、どうしていつも卯波先生がラゴムでも、なにするにも顎で合図をしてくるのかが。
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