策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
 部屋が広くて声が届きにくいから、顎で合図をする癖が身についているんだ。

 それだ。パズルの最後のパーツがはまったように、すっきりした足どりで卯波先生の隣に座った。

 こんなに座り心地がいいソファー、ほか
にある?

 体にフィットしたら、もう二度と離してくれない感覚。
 そうね、優しく腰をつかまれて、立てなくなっちゃうって言えばいいかな。

「さっき話していた、高級ホテルのスイートルーム、行ってみたいのか?」

「卯波先生といっしょにいられるのなら、どこだっていい」
「本当に甘い口だ」

 院長ありがとう。それに、インチキ恋愛講座なんて言ってごめんなさい。

 院長、見た? 卯波先生がまんざらでもない顔で、照れくさそうに微かだけど、笑うように頬を動かしましたよ。

 院長から、受講料と報酬金を払えって言われそう。
 いたずらが成功した子供みたいな満面の笑みを見せて、得意気にね。

「スイートルームより、卯波先生の家が大好き。竹さんが手入れをしてくださってる、お庭を花散策できるし、根崎さんも初美さんも、お優しいですし」

 いっしょにいられるのなら、どこでもいいのは本音。

 だってもう二度と、卯波先生と寄り添えるなんて想像もできなかったもん。

「気に入ってくれてよかった。俺の思ったように、桃なら誰とでもうまくやれる。両親が来たら、これを手土産に渡してくれ」
「はい」

 ノックをする音が響く。
「どうぞ」
 卯波先生の声に、私はソファーから立ち上がり、ご両親をお迎えする準備をする。

 卯波先生、私に内緒でいきなり連れて来てくれたんだもん、服装は大丈夫かな。

 生まれて初めての経験。大丈夫かな、珍しく少し緊張してきた。

「大丈夫、桃はそのままで十分魅力的だ」
 座ったまま見上げる卯波先生が、安心をくれるように私に微笑みかけてくれる。

 扉を開く根崎さんの、お隣に立っていらっしゃったご両親は、卯波先生と院長が教えてくださったままの素敵なご両親。

 少し緊張したのも束の間、卯波先生のご両親にお会いできた喜びの方が気持ちが上回って、心からの笑顔を浮かべて、初めての挨拶もできた。

「ようこそ、わが家へ。お待たせしてすまなかったね」

 艶々しく光る黒髪がダンディーな卯波先生のお父様は、たしかに卯波先生が話してくれたように、背が高くて立ち姿が卯波先生みたい。

「桃ちゃん、お人形さんみたいに可愛いわね、笑顔も満点ね。晴明は愛想がないでしょ、ごめんなさいね、素っ気なくて」

「いいえ、とても優しく話を聞いてくださいますし、丁寧なご指導をしてくださり、とても感謝しております」

 先ほどの昼食のお礼をしたら、卯波先生のお母様が我が家の味を気に入ってくれ、嬉しいって喜んでくださった。

「その髪に飾ってるのは、羽衣ジャスミンね。桃ちゃん、器用ね。きれいに編み込んで似合ってるわよ」

「いいえ、卯波先生が編み込んでくださいました」
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