策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「一次診療で、さらに専門的な検査や診療が必要と判断された場合、二次診療施設で専門医が必要な検査をしたり治療をすることです」

 人間の総合病院と同等の、いろいろな医療器具を使って検査や治療をしている。 

 最初のころ、一次診療と二次診療の役割を、私に教えてくれたのは卯波先生。

 クールで無口で素っ気なくて、つっけんどんで無愛想。
 卯波先生が、なにを考えているのかわからなくて、坂さんに相談したんだよね。

 もうあれから二年経ったんだ、懐かしい。

「よく勉強していて感心するよ」

「いつも、こうして卯波先生が質問をしてくださるんです」
 私が褒められるってことは、卯波先生の教え方が上手ってこと。

 そう想ったら嬉しくて、つい口もとがほころんじゃう。

「うちは初めて受診する場合は、他の医療機関からの紹介状が必要なんだよ。しかし、紹介状がない患畜が来院することが多々あるんだ」

 卯波先生のお父様が困った顔で、卯波先生に視線を移す。

「だから、うちが引き受けて本院と提携している」

 連携プレイで、お互いスムーズに治療が施せるって、動物にとってもオーナーにとっても素晴らしい。

「この地域には、競合相手の動物病院がないから、立地条件としても穴場だ」

「この辺りのオーナーや動物たちにとっても、幸せな話ですね」

「ひとつでも多くの命を救えることになる」
 この堂々と断言する自信が好き。

「一次診療は紹介先の専門医とも、定期的に二次診療の症例検討を行うのが通例だ」

 卯波先生の瞳がきらきら輝いて、充実してるのがわかる。

「親父とならセンターが近いから、ひとりで熟考したら、いつでも意見交換ができる」
 卯波先生の理想的な獣医療なんだね。

 近い将来、私は卯波先生のもとで動物看護師として支えることになる。

 卯波先生のご両親とも、いっしょに仕事をすることになる機会もあるはず。

 襟を正して、背すじを伸ばしているように、心の芯も伸ばさないと。
 
「実は、今日来たのは大切なことを報告するために来た」
 話が一段落したら卯波先生、改まってどうしたの?

 今までソファーから前屈みになって、夢中で話していた背すじを伸ばして、座り直して。

 卯波先生の膝の上に置かれた握りこぶしが、私の視界に入ってきたから、きっと神妙な面もちなのは想像がつく。

 私の真向かいに座っていらっしゃる卯波先生のお母様は、卯波先生の様子を優しく微笑みながら深く頷き、話のつづきを待っていらっしゃるみたい。
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