貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
「我々は他人に弱みを見られることをよしとしません。可能な限り隠し、自分の力でなんとかしようと限界まで抗います。ですが陛下がそれでは困るのです。誰よりも早く快癒していただかねば、私も自分の仕事に集中できません」

 本当に獣のようだ、とナディアは思っていた。

 手負いの獣は怪我を隠したがるものだ。安全な場所でじっと身を潜め、敵の手にかからないようにする。

 獣人たちもそういった性質があるのだろうと判断し、ナディアは慎重にゲルハルトに声をかけた。

「近づいてもいい?」

 微かに呼吸を荒くしたゲルハルトが小さく唸る。

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