貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ぴんと立った耳は、ナディアが生むどんな音も聞き逃すまいとしているようだった。

「嫌なのはわかるわ。だけどあなたが元気になってくれないと、みんな困るの」

「エセルはどうした」

「あの人は私より仕事が多いから、そっちを頑張ってるわ」

 喉奥で唸るゲルハルトを、なるべく刺激しないよう続ける。

 言葉が通じていても、本当に獣に言い聞かせているような錯覚に陥った。

「国王になにかあったらこの国はどうなると思う? だからエセルはあなたの看病を最優先にさせたのよ。本当だったらあの人も自分自身でやりたいはずだわ」

 ナディアはエセルの信頼を勝ち取っていない自信があった。

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