貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 触れた手が離れるのを妙に意識しながら、ナディアは寝室を出た。

 ぼうっとしながら椅子に腰を下ろし、ゲルハルトのぬくもりが残る頬をなでる。

「……なに、今の。どういう意味?」

 熱があるようには見えなかったが、そうとしか思えない言動である。

 騒ぐ胸を落ち着かせるようにつぶやいたナディアの頬は、赤く染まっていた。



 突如大流行した病は一向に終息の兆しを見せなかった。

 ナディアに症状は出ないままだったが、いつゲルハルトが変調してもすぐに対応できるよう気を張っているせいで寝不足が続いている。

 今日もまた、ナディアは咳き込むゲルハルトの看病をしながらあくびを噛み殺していた。

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