政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


「誰がいるかわからないから、あまりひとりで出歩かないで」

「あ、はい。今は、ちょうど及川さんにお会いして、ついて歩いてくださいました」


 少しでも緊張が軽減するよう、先に会場の様子をひとり覗きに行ってきた。

 でも、逆に圧倒されてしまった感が拭えない。


「そうか。及川が一緒なら心配いらないな」

「はい。もう下りられますか?」


 今日は別館オープンの記念式典に加え、プリリュとの業務提携の正式発表もある。

 多数集まるマスコミはそれ目当てで、明日のニュース記事には多く取り上げられるだろう。


「そうだな、そろそろ時間だ」


 拓人さんが私を反転させ、正面から抱き寄せる。切れ長の目にじっと見つめられ、鼓動がトクトクと高鳴っていく。


「すべて終わったら、ふたりきりでゆっくり過ごそう」


 私が「はい」と答えた唇に、そっと口づけが落とされる。それだけで体が熱くなってきたことを悟られないように、にこりと笑顔をみせて誤魔化した。

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