政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
会場に出ると早速拓人さんはあちこちから声をかけられる。
その度に一緒に足を止め、挨拶に応じる。
私のことを知らない相手には「妻の茉莉花です」と必ず紹介してくれ、私も拓人さんの妻として恥じないよう挨拶をした。
「拓人!」
会場内を歩いていると、どこからか拓人さんを呼ぶ知った声が聞こえてくる。
目を向けると早苗さんが隆史さんとともに近づいてくるのが見えた。
「今日は大切な日にうちとの提携発表までありがとう」
「こちらこそ。合わせてもらったような形になって悪かったな」
「いいえ。逆に話題性が高くなったわ。乗っかるような形になったのはこっち」
ふたりは自然な動作で握手を交わす。友人としてという感じではなく、ビジネスパートナーといった雰囲気だ。
「茉莉花さん、今日はありがとうございます」
早苗さんは丁寧に私にもお礼を口にする。
体のラインのはっきり見えるタイトなブラックのロングドレスを身につける早苗さんは、今日もスタイルが良く美しい。長い髪をアップにしていて、それもまた色っぽく私の目に映った。
「こちらこそ、ありがとうございます。すごく楽しみにしています」
私たちの挨拶が終わると、拓人さんは隆史さんにも「三栗谷さんもお忙しい中ありがとうございます」と上品に頭を下げる。私も倣って頭を下げた。
「では、また後ほど」
拓人さんの手が私の背に添えられる。「行こう」と言われ、ふたりの元を立ち去った。