政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
業務提携の発表までが終わった会場では、乾杯の挨拶が行われた。
招待客には、歓談しながら立食形式でお酒と食事が提供される。
「茉莉花さん、いたいた!」
何か飲み物でももらおうかと会場の隅にあるドリンクカウンターに近づいたとき、後方から呼びかけられ振り返った。
そこにはグラスを手にした早苗さんが近づいてくるのが目に入る。
「おひとり?」
「あ、はい」
私の反応に早苗さんは会場に目を配る。
「ああ、拓人まだ捕まってるのね」
パーティーが歓談の時間になっても、拓人さんは忙しそう。
挨拶がまだできていなかった人が声をかけたり、取材を受けたり、合間なく誰かしらに捕まっている。
「こういう機会に、拓人に顔と名前を憶えてもらいたい人間はたくさんいるわ」
来客と談笑している拓人さんに目を遣ったまま、早苗さんはどこかしみじみとした口調で言う。
「それだけ、彼がすごい人間ということね」
「そうですね」
「ま、妻は時折放置されがちだけどね」
早苗さんはお茶目にふふっと笑い、手にしていたグラスを私に差し出した。