政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


 大きなガラス窓から見える立派な庭園には、中央に女性の像が聳える白くて立派な噴水が水を湛えている。

 幼い頃、庭に出してもらい、あの噴水が好きでずっと眺めていたことをぼんやり思い出していたところで、「茉莉花さん」とお義母様の声にハッと我に返った。


「は、はい」

「拓人は京都のほうに出張だと聞いているわ」

「はい。明日帰られると聞いています」

「そう。おひとりで大丈夫? セキュリティ面は安心なマンションだとは思うけれど、女性ひとりというのは気持ち的に不安じゃないかしら」


 お義母様の気遣いに「ありがとうございます。大丈夫です」と笑顔で応える。

 お手伝いさんが私の前にソーサーに載った紅茶の入るティーカップを置いた。

 顔を見せてとお義母様から連絡をもらい、今日はひとり渋谷区松濤にある拓人さんのご実家を訪れている。

 高い塀に囲まれた豪邸は外からは全く敷地内の様子は窺えない。

 そんな住宅が立ち並ぶ高級住宅街に拓人さんの実家はある。

 子どもの頃から数度訪れたことはあったけれど、当時はこの豪邸に驚き、そして物凄くはしゃいでいた。

 ここに来ると、まるで別世界に来たような感覚にいつも心が躍った。

 広いお庭に、優しいお手伝いさんが出してくれる宝石みたいなスイーツ。お姫様にでもなったような気分を味わえた記憶がある。

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