仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
拓郎は、今度三期目をかけた選挙がある。きっとそれまでになんとかしたいと思っているのだろう。結局、大知のためではなく、自分の体裁のため。そのために、息子も、その嫁までも、コントロールしようとしている。
わかっていはいたけど、ここまでとは。人の人生を何だと思っている。
「悪いけど、それは無理だ」
「なっ……大知、お前ってやつは」
「あんたが何を言おうと、俺は別れない」
きっぱり告げると、大知は店員が持ってきたコーヒーと入れ替わるようにして、席を立ち店を出た。
とんだ無駄な時間だった。自分が拓郎の遺伝子を継いでいるのかと思うと、吐き気がする。
大知は爽やかな朝に似つかわしくない、どんよりとした嘆息を漏らした。