仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
「お茶入れるから、休憩室で待ってて」
「はーい」
張り切って、スタッフルームにかけていく。昔もこうやって志乃とお昼ご飯を食べた。他愛もない話をして、たまに愚痴り合って。もはやここにいるスタッフは、家族のような存在。
「お待たせ~」
志乃がお茶をもって、スタッフルームやってきた。小さな洋室にテレビと冷蔵庫、ロッカー程度しかないが、昔からこの場所がすごく落ち着く。
「院長は呼ぶ?」
「ううん、いい。お父さんのとこには後から行く」
「そっか」
端的に返事をして、志乃は熱いお茶をずずっと飲む。
ここに明が来ては、いくら気の知れた仲だとしても、志乃は休みが休みにならないだろう。
「お父さん、どんな感じ?気落としてないかな?」
「うーん、私たちの前では気丈にはしてるけど内心はね……」
言いずらそう口を開き、持参のお弁等に箸をつける。
やはり、落ち込んでいるだろう。何もできない自分が歯がゆい。杏のために開業しこれまで頑張ってきた明のために何かしてあげたいが、自分はまだ学生の身。不甲斐なくてたまらない。
「杏ちゃんは? 大知さんとは? うまくやってる?」
ごはんを運びながら、ちらりと視線を寄越す。
「あ、うん。仲良くしてるよ。相変わらず忙しくてあまり会えないけど」