仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
「その節は、お恥ずかしいところをお見せしました。呆れましたよね、すみません。忘れてください」
「呆れる? まさか。俺はあの笑顔を見たときから、杏を幸せにしたい、守りたいって思ってた。あのマンションに決めたのも、杏の笑顔があったからだ」
真っ直ぐ見つめたまま、そんなことを口にする。まさかそんな事実が孕んでいるとは思わず、胸の奥が痺れたように震える。
「てっきり呆れられたのかと……それに、病院から近いから決めたのだとばかり」
「あそこならセキュリティもしっかりしてるし、杏の安全が守られると思った。それにあんな笑顔見せられたらな。買わない選択肢はないだろ」
「そう、だったんですね」
全然知らなかった。つまり、あの時点から、二人の気持ちはすれ違っていたということだろう。大知は最初から杏の気持ちを優先してくれていた。大切に想ってくれていたのだ。