仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
目的地にたどり着くと、二人で海沿いをぷらぷらと歩いた。可愛いカフェやアパレル、雑貨屋などが立ち並び、まだ午前中だというのに、すでにたくさんの人で賑わっていた。
二人は散々迷った末、ハワイをモチーフにしたカフェに入った。テラス席は開放的で、風が気持ちいい。
「どれも美味しそう。迷っちゃうな」
席に案内されるとメニューに目を落とし、熱心に選び始める。
「パンケーキもいいですね。あ、でも大知さんはハンバーガーのほうがいいですか? って、どうしたんですか? 大知さん」
ふと、隣から熱烈な視線を感じ、目をぱちくりさせながら顔を上げた。
「いや。杏が喜んでくれてよかったと思って。メニュー、見せて」
言いながら、すっと杏の手元にあるメニューを覗き込んできた。いきなり距離を詰められ、ドキリとする。
「たしかにどれも美味そうだな」
「ですよね」
「好きなだけ頼めばいい」
冗談か本気かわからないトーンで言われ、ふふっと笑った。
大知は意外と、豪快なところがある。あのマンションだって、即決かつ、一括購入したと聞いているし、結婚だってそうだ。仕事でも、きっとそうなのだろう。