仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


 絶好のロケーションにくわえ、隣には大知がいてこんな幸せな朝はない。

「はぁ、お腹いっぱい」
「朝飯というより、もう昼飯だな」
「本当ですね」 

 時間を見ればもう昼時を過ぎていた。

 こんな時間にたらふく食べてしまっては、夜までいらない気がする。でも今朝大知が言ったように、時間やルールを忘れて過ごす日があってもいいかもしれない。思いつきでやりたいことをやったり、行き当たりばったりで店に入ったり。

 しがらみから解放され、自由に過ごす。できそうでできない、すごく贅沢な時間だ。

「海の方行ってみるか?」
「はい」

 会計を済ませると、二人で海岸へと出た。

 そこはカップルや家族連れで賑わい、平和な休日が広がっている。海岸沿いにある石段に腰を下ろすと、二人でぼんやりと海を眺めた。潮風が二人を包む。

「気持ちいですね。大知さん、帰り眠くなったら運転変わりますからね。遠慮なく行ってください」
「杏、免許持ってたんだな」
「はい! もう何年もハンドル握ってませんが」


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