仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない



 自転車で約二十分走ったところで、大知の病院に着いた。まだ日差しも熱く、額には汗が滲んでいるが、大知が待っていると思うと、自然と自転車を漕ぐ足が早まった。

 息を整えながら、おそるおそる正面玄関に向かう。大知の病院はさすが総合病院といったいで立ちで、建物もでかいが診療科ももちろん多い。

 掲示板に書かれた診療科は、いったいいくつあるのだろうかというくらい、細分化されている。北条病院とは大違いだ。人の出入りも激しく、まるで連休中のデパート並みの込み具合。

 こんな大規模なところで大知は働いているんだ。しかも彼はここの跡取り。いつかこの城のような病院を背負っていくのかと思うと、なぜか杏のほうが身震いしそうになっていた。

 病院の窓口である総合受付に着くと、杏は大知に着きましたとメッセージを送った。するとすぐ「今行く」と端的なメッセージが返ってきた。

 よくよく考えると、大知の病院に来るのは初めてかもしれない。つまり、白衣姿も初めて見ることになる。ドキドキしながら大知を待っていると「杏」と、呼ぶ声が届いた。

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