仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


「先生のお陰で、この通り元気になりました」
「とんでもない。理人くんが、オペやリハビリを頑張ったからですよ」

 穏やかな口調で労う。理人くんを見る目も、すごく優しい。

 大知の医師としての顔は知らなかったし、きっと知る機会はないだろうと思っていた。でも今こうやって少しだけ触れることができて、すごく感動している。

 きっと大知は素敵な医師なのだろう。でなければ、こんなふうに声をかけてこない。

「ママ、受付で呼ばれてるよ。じゃあね、先生」
「あぁ、またな」
「はーい!」

 元気よく答えると、二人は行ってしまった。ここに来れてよかった。大知の知らない一面を知れて、すごく嬉しい。

「悪いな。この前退院した子で」
「いえ。大知さんの医師としての顔が見られて嬉しいです」

 照れながら言えば、大知がぼそっと「俺も」と、つぶやいた。

「勤務中に杏に会えて、ちょっと浮かれてる。自分の失態を棚に置いてなんだが」

 嬉々する顔を隠すかのように前髪を掻き上げる。その仕草もまた色っぽくて、かっこいい。

 この顔をさせているのが自分だと思うと、さらに胸がキュンと疼いた。


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