仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
「どこにやった。だいたい、どうしてこんな真似を」
「だから私は……!」
「嘘を吐くな。俺は一言も離婚届だとは言っていない。それなのにどうして知っていた」
デスクを立ち、呆然と立ち尽くす閑に詰め寄る。閑は唇を噛みしめ、今にも崩れ落ちそうなほど震えている。
「言え」
「だから、その……」
大知の迫力に押され、閑は震える唇をわずかに開く。
「……少し前、先生が引き出しを開けた時、見ました」
そう言われ、あの時か、と思い出した。確か閑に手紙を出してほしいと頼んだ。見られていないと思ったが、やはり。
すると、閑がとんでもない発言をした。
「私が、出しました」
「は? なんだって!?」
思わず語気が荒ぶる。
「離婚、されるんですよね? それならいいじゃないですか」
ケロッと悪びれる様子もなく、そう口にする。大知は開いた口がふさがらなかった。
「離婚届を見た時、離婚されるんだと知ってすごく嬉しくなりました。やっと目が覚めたんだって。私はここに来た時からずっと、先生のことが好きでした」
ハッと顔を上げながら涙ながらに訴える。まさかの告白に、眉間に皺が寄った。