仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


「どこにやった。だいたい、どうしてこんな真似を」
「だから私は……!」
「嘘を吐くな。俺は一言も離婚届だとは言っていない。それなのにどうして知っていた」

 デスクを立ち、呆然と立ち尽くす閑に詰め寄る。閑は唇を噛みしめ、今にも崩れ落ちそうなほど震えている。

「言え」
「だから、その……」

 大知の迫力に押され、閑は震える唇をわずかに開く。

「……少し前、先生が引き出しを開けた時、見ました」

 そう言われ、あの時か、と思い出した。確か閑に手紙を出してほしいと頼んだ。見られていないと思ったが、やはり。

 すると、閑がとんでもない発言をした。

「私が、出しました」
「は? なんだって!?」

 思わず語気が荒ぶる。

「離婚、されるんですよね? それならいいじゃないですか」

 ケロッと悪びれる様子もなく、そう口にする。大知は開いた口がふさがらなかった。

「離婚届を見た時、離婚されるんだと知ってすごく嬉しくなりました。やっと目が覚めたんだって。私はここに来た時からずっと、先生のことが好きでした」

 ハッと顔を上げながら涙ながらに訴える。まさかの告白に、眉間に皺が寄った。

< 140 / 161 >

この作品をシェア

pagetop