仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


 ぽふっと背中が柔らかな感触に包まれた。大知の部屋に連れてこられたと思ったら、強引にベッドに押し倒されてしまった。

「あの、大知さん。これは……」

 大知の部屋に、杏の心もとない声がこだまする。部屋の中は心地良いフレグランスの香が広がっていて、これが大知の香りなのだと知る。

 どうしてこんなことに……?

(最後に夫婦らしいことって、そういうこと……)

 男の色気溢れる大知を見つめたまま、無意識に喉がごくりと鳴る。

「杏、嫌か?」
「い、いえそういうわけでは。ただ、すごく緊張して……」

 そう言えば、大知がふっと口の端を上げ笑った。そのギャップに、胸がトクンと跳ねる。

「真っ赤に崩れた杏の顔を、もっと見てみたいと思ったんだ」
「え? あの」

 大知の下でただオロオロしていると、柔らかな感触が唇に走った。

「んっ……」

 嘘、キスしてる?

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