仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
しかも結婚式でしたものとはまったく違っていて、深くて長いキス。
舌で唇を割られた次の瞬間、ぬるっとした大知の熱が杏の口内に挿入された。歯列をなぞられ、舌根をじゅっと吸われる。まるで味わうかのように、余すことなく蹂躙する。
どうするのが正しいのかわからず、初心な杏はされるがまま。
「はぁっ……」
次第に息が上がり、思考がとろんと溶けていくのを感じる。
『離婚するのに』
その言葉が頭に過っていたのは最初だけ。既に大知の巧みなキスに夢中にさせられていて、このまま溺れてしまいたいという感情に上書きされていた。
最後の思い出にしよう。ずっとこうしたいと望んでいたんだから。
「大知さん、もっとしてください」
同意するように大知の首にゆっくり手を回す。
「いいんだな」
「はい」
「それなら、手加減しない」
大知は一瞬にしてオスの牙をむいた。
このあと、二人の最初で最後の初夜は、何時間にも渡って続いたのだった。