仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


(大知さん、素敵だったな……)

 大知の寝顔を見ながら、思わず至福のため息がこぼれる。

 男っぽくて、でも優しくて。思い出しただけで胸がキュンとする。いつもクールで、あまり感情を表に出さない大知が、あんな切羽詰まった顔するなんて知らなかった。

 そんな顔を自分がさせていたと思うと、また嬉しくなった。

「杏?」

 じっと見惚れていると、大知とバッチリ目が合った。

「あ、お……おはよう、ございます」
「おはよ」

 まだ完全に頭が起きていないようで、目がうとうとしている。その姿もまた無防備で素敵。

 いつも戦闘態勢の男が、油断している姿は何とも言えない。それに肌がすごく綺麗で鼻も高く、どこと切り取ってもかっこいい。もはや、彫刻みたい。

「何時?」
「六時です。支度しなくていいんですか?」
「あともう少し、杏に触れていたい」

 そんな甘い言葉の後、回された手に力がこもる。さらに強く抱きしめられ、昨夜と同じくらいドキドキと心臓が高鳴った。

(どうしちゃったの? 大知さん。甘すぎて眩暈がしそう)

 それに、そんなこと言われたら、期待しそうになる。



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