仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
やや空気が読めないところもあるが、上昇志向で大知に憧れている医師の一人。
「口じゃなくて手を動かせ。しっかり圧迫しろ」
「すんません」
大知の声にへへっと肩をすくませると、いそいそと出血部位を圧迫する。
大知のスピーディーなオペ術により、普通なら三時間はかかるところ、二時間で終わらせてしまった。もちろん、腫瘍もきれいさっぱり取り除いた。患者にとって負担も少なく、実に良いオペだったと言える。
終わった後、見学席からは拍手も巻き起こっていた。
「岩鬼先生! お疲れさまでした。いやー今日もめちゃめちゃ早かったっすね! 脳との境目にあった腫瘍を、ちゃちゃっと取り除いたときは、うわーって、すげー興奮しちゃいましたよ。次の助手も俺を指名してくださいね。俺、もっともっと岩鬼先生から技術盗みたいんで」
オペ着を脱ぎながらその場を後にする大知の後ろを、手振り身振りで黒瀬が近づいてくる。大知ははぁと頭を抱え、黒瀬を見下ろした。