仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


 スペアリブに野菜サラダにかぼちゃのスープなど、どれも大知の好み。オペのあとはアドレナリンがでているせいか、肉が食いたくなるから、今日の献立はまさにベスト。

「どうですか?」
「うん、うまい」
「よかったぁ」

 ホッとしたように笑顔を見せる。その顔を見ているだけで、お腹いっぱいになりそうだが、大知はどんどん箸を進めた。

 それからを他愛もない話をしながら、夕食を楽しんだ。二人とも始終笑顔で、傍から見たら幸せな夫婦。

 でもきちんと、今の自分の気持ちを伝えなければならない。それは大知をにとってハードルが高いことだが、そんなことを言っている場合ではない。

 大知は箸を置くと、切り出した。

「杏、今朝言ったことだが」

 大知の緊張感を察知し、杏も慌てて箸を置く。そして大知を真っ直ぐ見つめた。

「はい」
「杏のためになるのならと、物わかりのいいふりして、最初は離婚を受け入れたが、やっぱり俺はしたくない。これまで夫らしいことも何一つしてやれなかったし、杏が愛想をつかすのは無理もないと思ってる。でも後悔してる。もっと杏と一緒にいたいし、挽回できるものならしたい。勝手なことを言っているのは重々承知だ。でも、やっぱり手放したくない。杏、俺に、チャンスをくれないか?」



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