国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
肝心なことをまだ聞けていないが、聞くなら今だ。

「あ、あの……お名前は?」

彼はウイスキーのグラスをコロンと鳴らし、少し笑う。

「加能久嗣」
「……加能さん」
「久嗣でいい」

ドキドキしてさっきからカシスのカクテルがうまく飲めない。消え入りそうな小さな声で「久嗣さん」とつぶやいてみた。

「きみは?」
「玲菜です。……葉月(はづき)玲菜」
「玲菜」

彼に私の名前を呼ばれると、急に恥ずかしくなる。

「なんで泣いてたの?」
「あ……すみませんお見苦しいところを……」
「見苦しくないけど。全然泣けるシーンじゃなかったから逆に面白かったし。……なにか悲しいことでもあった?」

カウンターに肘をつき、彼は下から覗き込んでくる。
あまり表情を変えずに淡々と話すためクールな人という印象だが、端々に優しさのよう気遣いを感じる。異国で簡単に人を信じてはいけないが、今は優しくされるとダメそうだ。
甘い言葉に感化され我慢できず、押し込めていた涙が再びあふれてくる。

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