国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~

凌太が「パ!」という喜びの声を上げたことで、久嗣はやっと笑顔を向ける。

「ただいま。来てくれたのか、凌太」

ベビーカーからわざわざ持ち上げて抱っこし、頭を撫でながら歩き出す。私はいつものように、空っぽになったベビーカーを押して久嗣の後を着いていく。

〝奪われる〟

ふたりの世界に入った久嗣と凌太を見ていると、母親としての本能なのかそんな感覚がよぎった。もし久嗣が敵だったら、なにもかも奪われる。彼への私の愛は宙ぶらりんになり、凌太とも引き離される。
不穏な鼓動が鳴り止まない。

「玲菜、玲菜」

久嗣は振り返って私を呼ぶ。

「え……」
「顔色が悪いな。なにをそんなに焦ってる?」

鋭い視線で貫かれ、冷や汗が止まらなくなった。久嗣の本心がわからない。彼に見抜かれているような感覚に一気に恐怖心に包まれる。
離婚の話に触れてはダメだ。ここで聞いたことを悟られてもいけない。もっとちゃんと様子を見て、久嗣の本心がわかってからじゃないと。
──なにもかも失う。
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