国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
襟の弁護士バッジが光るマッドなグレースーツを着こなし、颯爽とこちらへ歩いてくる。周囲とはワンランク違う洗練された彼が歩く道筋は、かすかに人が引いていた。
久嗣は息を止めていた私とベビーカーの前で立ち止まると、傾けて転がしていたスクウェアのスーツケースを垂直に置く。
「Really? Okay...」
スーツケースの取っ手を持っていた手をベビーカーの中へ伸ばした久嗣は、凌太の頭を撫でた。凌太は家を出たときはたしかに起きていたが、いつの間にか眠っていたらしい。気づかないほど久嗣のことで頭がいっぱいだったのだ。
五センチくらいの柔らかい髪を指先で撫で、すぐにスーツケースの取っ手へと戻す。
私にはいっさい触れられず、前髪がムズムズした。
「Sorry, Could you tell me later?」
ニューヨークでの留学経験があり、今もこうして頻繁に海外出張をこなす久嗣の英語はとても聞き取りやすく、ネイティブと遜色ない。帰国子女である私よりも現地ではコミュニケーションが上手いのではないだろうか。
彼はスマホを耳から下してポケットにしまった。