春色の恋−カナコ−[完]
お弁当箱を見ながらあれこれ想像していた私の後ろから、低い声でおにいちゃんが挨拶してきて。

おにいちゃんが来たことにまったく気がつかなかった私は、あまりにもびっくりしすぎて声が出なくて。

「カナコ?」

驚きのあまり固まってしまった私の顔を、おにいちゃんが覗き込んできた。

「も、もう!びっくりした!」

おにいちゃんから離れて、思わず大きな声を出してしまう。

「あはは。走りに行くぞー」

タオルを手に持ち、玄関を指さしているおにいちゃん。

私もあわてて準備をしておにいちゃんと一緒に玄関を出た。

天気のいい日は、いつものコースも気持ち良くて。

「それで、お弁当はできたの?」

途中、公園で水分補給しながらおにいちゃんが聞いてきて。

「うん。あのね、荷物になるけど…」

「ああ、ちゃんとコウスケに渡しておくから」

顔が赤いよ、なんておにいちゃんにからかわれながら、家への道のりも軽やかに走ることができた。

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