春色の恋−カナコ−[完]
『ああ、悪いんだけど今夜は帰れないかもしれないんだ。ちょっとトラブルで』

時々、こうして帰宅が明け方になったり、もしくは会社に泊まりで仕事になることのあるおにいちゃん。

責任のある立場にいるらしく、自分自身の仕事以外にも、あれこれ忙しいらしい。

「わかったわ。無理しないでね」

『先に寝ててくれな。お休み』

電話を切ろうとした時に、聞こえてきた声に心臓がどきんと大きく動いた。

『カナコちゃん?』

「コ、コウスケさん!?」

おにいちゃんと一緒に仕事をしているのだから、その場に河合さんがいてもおかしくないけど。

まさか、おにいちゃんの電話から河合さんの声が聞こえるなんて想像もしていなくて。

確かに、仕事が終わったら連絡をくれると言っていたけど。

おにいちゃんから連絡がなかった時点で、河合さんも忙しいんだと勝手に思っていた。

『連絡できなくてごめんね。お弁当、すごくおいしかったよ』

電話から聞こえるありがとうの言葉に、顔が赤くなるのがわかる。

なんだかすごく照れくさくて。

「い、いえ。あの、また作っていいですか?」

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