春色の恋−カナコ−[完]
「はは。そんなに残念そうな顔されると、コウヘイの居ないところへ連れて行きたくなるよ」

「えっ、やだ、もう…」

私、そんなに残念そうな顔してた!?

でも、もう少しだけ河合さんに触れていて欲しかったのは事実。

「今日は駄目。ほら、カナコはお風呂入っておいで」

遠くで食洗機の動く音が聞こえてきて、おにいちゃんがいつの間にかそばに立っていた。

私はびっくりしてあたてて立ち上がり、走って自分の部屋へと駈け込んでしまった。

だめだぁ。

同じ屋根の下に、おにいちゃんがいるのに河合さんもいて。

河合さんと二人きりも緊張するけど、おにいちゃんがいるとどうしたらいいのかわからなくなってしまう。

大好きな河合さんと、大好きなおにいちゃん。

でも、その好きはどちらも違う好きで。

でもでも、違う好きでも、私にとってとても大切な二人が一緒にいると、私はどうしたらいいのかわからなくなってしまうんだ。

初めて知った事実だったけど、でもそれでも河合さんに会えたことがうれしくて。

こうして連れてきたおにいちゃんに心から感謝していて。

「カナコー」

階段の下から名前を呼ばれ、あわてて着替えを持ってお風呂へと向かった。

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