春色の恋−カナコ−[完]
沢山のありがとうを伝えたいけど、言葉が思い浮かばない。

「さ、時間がもったいないだろ?カナコも顔を洗っておいで」

まだ飲みかけだった私たちのお茶までささっと片付けて、おにいちゃんに追い出されるようにして家玄関へと向かった。

「コウスケ、カナコをよろしく」

「ああ、行ってきます」

顔を洗ってお化粧を直したけど、すぐにまた目がしらが熱くなってしまうよ。

おにいちゃんに見送られて、私たちは家を出てデートに出かけた。

何度も乗った河合さんの車の助手席だけど、今日は一段と恥ずかしくて。

横で運転している、河合さんの顔を見ることができない。

おにいちゃんに向けて言った河合さんの言葉。

いくつか気になった言葉があったんだけど、突然の出来事にうまく処理できない私の頭。

でも、挨拶って、挨拶…?ってやっぱ、そう言うことなのかな?

でもでも、私たちまだ付き合い始めたばかりだし、それに今までそんな話になたことないのに。

「カナコちゃん?」

ずっと黙ったままの私に、信号で止まった河合さんがそっと左手を伸ばしてきて私の頬に優しく触れた。

「どうした?」

いつとも変わらないその優しい声に顔をあげると、その瞳もいつも以上に優しくて。

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