知ってしまった夫の秘密
「真琴と出会ったとき、頭がいいってすぐにわかった。政治や経済や歴史問題、俺のどんな話にもついてこれたのはお前だけだった。家庭は“会社の共同経営”みたいなもんだろ? お前のことは信用してるんだ」

「そんな話、初めて聞いたわ。私を女として愛してはいないのね」

「聡明だと褒めてるじゃないか! 俺はバカじゃなくて賢い女と結婚したかった。だから利英とは無理なんだ。アイツは浅はかだからな」


 褒められていると思えるわけがない。
 耳を疑うような巡二の発言で、一気に胸の中がドロドロとした黒い気持ちでいっぱいになった。
 やはり巡二はどうかしている。私と村本さんふたりに対しても失礼だし、人をバカにするにもほどがある。


「なんなの、その区別は。用途別に私たちを分けていたの?」

「適材適所だ。真琴と利英では求めてるものが違うから」

「結婚生活はビジネスじゃない!!」


 私が巡二に激高して大声を張り上げたのは初めてだった。
 彼もそのことに驚き、目を丸くして固まっている。

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