知ってしまった夫の秘密
「で、なにがあった?」


 佑さんは腰につけていたエプロンを取り、私の隣の椅子に静かに座った。


「話はいつでも聞くって言っただろ? でも……話したくないか」


 私はニョッキを咀嚼したままフルフルと小さく首を横に振る。

 気づかってもらって、おいしい料理まで作ってもらったのに、なにも話さないのはワガママな気がした。
 というより、佑さんは興味本位ではなく本当に私を心配してくれているのがわかるから、頼ってもいいと思えたんだ。


「実は……夫の不倫が発覚したんです。二年も前から私は裏切られていました」


 今日起こった出来事をポツリポツリと話し始めると、佑さんは最初こそ平然と聞いていたが、徐々に唖然とした表情に変わっていった。


「結婚の意義がわからなくなりました。“会社の共同経営”と同じですか?」

「ん? なにそれ」

「夫にそう言われて……」


 佑さんは小さく溜め息を吐き、難しい顔をして考え込んだ。

< 30 / 35 >

この作品をシェア

pagetop