知ってしまった夫の秘密
「結婚とはなにか、なんて未婚の俺が解くのは生意気だけど。家はプライベート空間なんだし、自然にホッとできる場所であってほしい。だから大抵の人は“温かい家庭”を望むんだろ」

「……ですよね」

「ふたりは最初から考え方が違ったんじゃないかな。旦那さんはドライだけど、真琴さんは愛が欲しかったんだよな?」


 佑さんが今言った言葉がすべてだ。核心をついている。
 私は単に夫の浮気に腹を立てたわけではなく、結婚してから夫が私に愛をくれていなかったこの惨状に絶望しているのだ。

 私は愛されたかった。多くの女性が望むような結婚生活を夢見ていた。
 
 それは……そんなに贅沢な夢だっただろうか。私には高望みだった?

 胸がギュッと締めつけられ、今までまったく涙が出なかったのに、一気に鼻の奥がツンとしてきて。
 (せき)を切ったように大粒の涙があふれだした。


「ごめんごめん。泣かないで」


 佑さんがあわててそばにあったティッシュを私に手渡した。
 謝らないでほしい。佑さんは悪くないのだから。

< 31 / 35 >

この作品をシェア

pagetop