再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 真綾は首を左右に振った。

「お気持ちだけで充分です」

 キッパリと断ると、ノアは盛大にため息をつきながら肩を竦めた。
 その顔には不満そうな色が浮かんでいる。

「はぁ……。切り返しがうまくなったね、真綾」

 そういう訳ではないが、思わせぶりは絶対によくない。
 恋愛的な気持ちをノアに抱けない以上、そのあたりの線引きはしっかりしなくてはならないだろう。

 断固とした態度を取りながら、ノアに頭を下げる。そして、自分の気持ちを真摯に伝える。
 それが自身に対して好意を抱いてくれているノアにできる、ただ一つのことだと思うから。
 真綾は身体をノアに向け、正直な気持ちを告げた。

「私はずっと幹太の父親のことが好きなので。スミマセン」

 この言葉を、何度ノアに伝えてきただろうか。でも、この言葉に尽きるのだ。
 それは彼も聞き飽きたようで、やりきれないといった様子で息を吐く。

「気持ちはいずれ変わるよ?」
「……」
「だって、永江先生はとっくの昔に真綾のことを忘れていたってことでしょ? 結婚しているのが証拠だと思う」

 厳しいことを言ってくる。だが、彼が言っていることは正しい。
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