再愛婚～別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています～

　本当に申し訳なく思って、「とにかく仕事に戻ってください」と懇願に近い形で言うと、ようやく央太は折れてくれた。

　だが、一つ約束をさせられてしまったのだ。
　渋々頷いた真綾を見たあと、央太は仕事があるからと急いで事務所に戻っていった。

　本当は真綾たちを家まで送ってくれるつもりだったらしいが、彼は仕事中だ。
　そんなに時間を取ることはできなかったのだろう。
　申し訳ない、と謝罪までして戻っていった。

　央太に謝ってもらう必要なんてどこにもない。それどころか、こちらがお礼を言わなければならない立場だったのに。

「……近々、二人きりで話し合いの場を設けてほしい、かぁ」

　約束したくなかったというのが本音だ。しかし、あそこで約束しなければ央太はいつまで経ってもあの場を離れなかっただろう。

　苦く思いながらも、渋々と承諾をした。そんな真綾を見て、央太はホッとした表情を浮かべていたのが印象的だった。
　後ろ髪引かれる様子で真綾を見つめてきた彼の目を忘れることができずにいる。
　央太は去り際、真綾の手に名刺を握りしめさせてきた。

『連絡をくれ。絶対にだ。お礼はそれでいい』