追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!

 幼い頃に何度も読んだおとぎ話。――その中でも大好きだった精霊たちの王様そのものの姿にリゼットは目を丸くした。

「王様……なんですか?」

 ジェイドは驚くリゼットを見下ろし、優しく微笑んで頷いた。
 それを見ていた公爵が髪も衣服も乱れたまま、怒りをあらわにする。

「リゼット! いったいなにをしてるんだ!? これらの騒動はお前の仕業なのか!」
「男よ、それは違う。この騒ぎはそなたたち自身が引き起こしたもの。リゼットをこれ以上貶めるのなら許さぬ」
「なっ、なっ……」

 リゼットを怒鳴りつける公爵に答えたのはジェイドだった。
 その威圧感に公爵は気圧されたのか、言葉が出てこないようだ。

 ジョフロワとソレーヌは憎々しげにリゼットを睨みつけ、国王と側近たち、衛兵や今夜の招待客たちは唖然としてジェイドを見ている。
 リゼットはみんなにジェイドの正体を伝えるべきだと判断して、庇うように前に立つジェイドの隣へと進み出た。

「陛下、発言をお許しください。ジェイドは――この方は、精霊たちの王であられます」
「なにを馬鹿なことを言ってるんだ! 陛下にまでそのような嘘をつくんじゃない! 無礼であろう!」
「リゼット、お前はついに頭がおかしくなったんじゃないか!?」

 リゼットの訴えにすぐさま反論したのは公爵とジョフロワだった。
 国王はうろたえるだけでなにも言わない。
 すると、ソレーヌが優しく微笑みながら近付いてきた。

「ねえ、あなた……リゼットに雇われて、こんな馬鹿なことをしているんでしょう? 正直に言えば、あなたのことは私が助けてあげる。ねえ、早く言って……」
「我に触れるな、無礼者」

 猫撫で声で囁きかけて腕に触れたソレーヌの手をジェイドは振り払った。
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