追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!
「なっ、なんですって!?」
ソレーヌは顔を真っ赤にしてジェイドを睨みつける。
「殿下、お父様! この者はリゼットと一緒になって、精霊の王だなんて嘘をついたんですよ!? 今すぐ極刑に処すべきです!」
ソレーヌはジェイドに振り払われた手で指さし、声高に訴えた。
極刑という言葉を聞いて、周囲の者たちがハッと息を呑む。
「それは違います! ジェイドは――」
「リゼット、そなたがこのような愚か者たちにこれ以上かまう必要はない」
リゼットはどうにかしてみんなにジェイドのことを――精霊王だということを理解してもらおうとした。
しかし、それを遮ったジェイドの声にはソレーヌたちへの蔑みがこもっている。
このままでは大変なことになると心配するリゼットをジェイドが再び抱き上げた。
「ジェイド!?」
「この狼藉者が! 衛兵たちはなにをしておる! 早くこやつを捕えろ!」
「そ、そうだ! この男をさっさと牢屋に引き立てろ!」
「殿下、お待ちください! 公爵も落ち着いて! 彼は――彼の方は伝説の精霊王ではないでしょうか!?」
驚くリゼットと冷静なジェイド、怒りを放つ公爵やジョフロワの間に割って入ったのは、国王の側近のひとりである神官長だった。
右手首の痣〝約束の証〟にまつわる精霊王と聖女の伝説は、今ではおとぎ話とされて信じている者は少ない。
精霊王を祀る神殿も形骸化しており、薄い痣しか持たない神官たちをジョフロワは蔑ろにしている。
「馬鹿馬鹿しい! 精霊王など伝説でも魔物を倒すこともできぬひ弱な存在ではないか! 私たち人間が使ってやってこそ、精霊も力を発揮できるというもの! たとえあやつが本物だとしても、精霊王など恐るるに足りぬ!」
ジョフロワが怒鳴りつけると、神官長はひいっと悲鳴をあげた。
同時に雷光が一閃、耳を劈(つんざ)くような雷鳴が轟き王城をぐらぐらと揺らした。
会場内だけでなく王城中から悲鳴があがる。
「ジェイド、今のはあなたなの?」
「心配しなくても被害は出していない。リゼットが気に病むことはわかっているからな」
リゼットの気持ちを察して、ジェイドが優しく答えた。
この王城ではリゼットにいい思い出などまったくなかったが、それでも誰かが怪我をするのは嫌なのだ。