追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!
ホッとするリゼットを愛おしそうに見たジェイドは、怯えるジョフロワやソレーヌ、公爵や国王に冷めた目を向けた。
「リゼットとそこの男との婚約という約束は破られた。親と子の契約もだ。よってリゼットはようやく自由になれた」
「な、なにを……なにを言ってるんだ!?」
「まだわからぬか、愚か者よ。自由となったリゼットは私がもらう。そなたたちとはもう関係もない。さらばだ」
震える声で問いかける公爵に厳しく答えると、ジェイドはリゼットを抱きかかえたままテラスへ続く窓へと向かった。
リゼットは呆然としてジェイドを見上げた。
いったいどういうことか、これからどうなるのかがわからない。
その背後から神官長が追い縋るように声をかける。
「お待ちください! あなた様に見放されて、我々はこれからどうなるのです!?」
「かつての精霊王との〝約束〟は、今世の聖女であるリゼットをそなたらが裏切ったことで反故となった。これから今までの代償を払うがよい」
「〝聖女〟だなんておとぎ話でしょう!? たとえ本当だとしても、なんの力も使えないリゼットが〝聖女〟のわけないわ! それなら〝聖女〟は私よ!」
嘆く神官長にジェイドが淡々と答えると、ソレーヌはヒステリックに叫んだ。
「〝聖女〟……リゼットが?」
ジョフロワや公爵たちは信じられないとばかりに唖然としている。
そんな彼らをジェイドは鼻で笑い、テラスに出ると白銀の狼の姿に戻った。
その背にリゼットは乗せられている。
「ジェイド、これはいったいどういうこと?」
「風の精霊たちが力を貸してくれたのだ。さあ、リゼット。これからどうする?」
爽やかな風が優しく頬を撫でてやっと頭が回り出したリゼットはハッとした。
会場内から騒がしい声は聞こえるが、窓はぴったり閉じられているらしい。
ガラス越しに怒りの形相になったソレーヌやジョフロワ、公爵らが見えた。
神官長や国王は悲壮な様子でリゼットとジェイドを引き留めようと叫んでいる。
だがリゼットは前を向き、ジェイドのふわふわの体にしっかり抱きついた。
もうここに未練はない。
「お願い、ジェイド。今すぐここを離れたいの!」
「承知した」
リゼットの願いに、ジェイドが力強く答えた。
瞬間、体がふわりと浮いた感覚になり、それから猛スピードで景色が通り過ぎていく。
まるで風になったようで、リゼットは温かなジェイドの背中でその心地よさに目を閉じたのだった。


