夫の一番にはなれない
彼の本音が見えないことが、こんなにも苦しいなんて思ってもみなかった。
わたしは彼に信じてほしかったし、自分でも信じていたいと思っていた。
けれど、「何も言わない」ことがときに「何も信じていない」ように見えることがあると、この数日で知ってしまった。
午前の授業を終えて職員室へ戻ると、來が自席で提出物の確認をしていた。
いつも通りの姿。
そのはずなのに、今日はどうしてか遠く感じる。
「來、これ2年生の保健資料」
「ありがとう」
それだけの会話。
でもその中に、必要最低限しか伝え合わない壁のようなものが立ちはだかっているように感じた。
ほんの数日前までは、こんなやりとりにどこかぬくもりを感じていたのに、今はわたしのほうからそれを遠ざけてしまっている気さえする。
「今日、帰り遅くなる?」
「ミーティングがあるから少し。終わったらLINEする」
「うん、わかった」
わたしの返事に來は特に表情も変えず、また書類に目を落とした。
少し前なら、そこからもう一言、なにか言葉が続いた気がする。