夫の一番にはなれない
たわいもない冗談でも、夕飯のリクエストでも、なんでもよかったのに。
沈黙のままに時間が過ぎていく。
胸にうまく言葉にならない不安だけが、重たく沈んでいく。
夕方、買い物帰りの道すがら、手にした食材の重みよりも、心の重さのほうが気になっていた。
望と会ったあの瞬間、わたしはどんな顔をしていたのだろう。
まるで懐かしさに浸るような表情で笑ってしまっていたんじゃないか。
來がその一部始終を見ていたとしたら、わたしのあの笑顔はどう映ったんだろうか。
來にとっては、過去の男とまだつながっているように見えたのかもしれない。
わたし自身、望に未練があるわけでは決してない。
でも、自分の中に浮かんだ“懐かしさ”や“安心感”といった感情が、思わぬ形で來の心を傷つけてしまったのかもしれないと思うと、いたたまれない。