夫の一番にはなれない
でも、“順調”とまで言い切れるほど、今のわたしたちは素直になれていない気がする。
來のことを信じている。
信じているのに、あの日からわたしたちのあいだに、小さな冷たい風が吹き抜けている。
わたしがその風を止められていない。
それが何よりも、つらかった。
夕暮れが近づくころ、校舎の影が伸びるのを見届けてから、わたしはいつもの帰り道を歩いていた。
今日は來が飲み会だと言っていたから、家に帰っても誰もいない。
そのことを思い出して、少しだけ気が抜けたように、わたしは深く息をついた。
ほんの少し前までは、來が家にいてくれるだけで安心できていたのに、今は不在のほうが心が軽くなる気がするなんて―――
自分のその変化に気づいて、わたしは思わず眉をひそめた。
家に着いて鍵を開けると、ほんのわずかな冷気が玄関から流れ込んできて、リビングの静けさを際立たせた。
來のスリッパがきちんと揃えられたままで、やっぱりまだ帰っていないことが確認できる。