夫の一番にはなれない
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朝、來の「行ってきます」に、わたしはいつものように「行ってらっしゃい」と微笑みながら返す。
それだけの、ほんの短いやり取りなのに、最近は少しだけ気持ちがざわついてしまう。
それは、あの夜を境に、わたしたちがたしかに“夫婦らしいこと”をするようになったから。
手をつないだり、何気ないスキンシップを取ったり。
ときどき、ふいに來がわたしの髪を撫でたり、買い物袋をひったくるように持ってくれたりする。
優しい仕草を向けてくれるたび、胸がきゅっと締めつけられる。
うれしくて。
でも、うれしいだけじゃない。
來がわたしに触れる理由が、ほんとうに“愛情”なのか、それともただ“続けることにしたから”なのか。
その境界がわからない。
だから、どこか安心できない安心の中で、わたしは日常を送っていた。
「奈那子先生、最近ほんと仲良しですよね、滝川先生と」
職員室の昼下がり、早川先生の無邪気なひと言に、わたしは一瞬、笑顔を貼りつけるのを忘れた。