夫の一番にはなれない


「え? あ、うん……まあ……」


たどたどしく返してしまった自分に気づいて、慌てて水を飲む。


きっと顔が赤くなっている。

この前までなら、迷いなく「うん、仲いいよ」って返せていたのに。


最近のわたしは、それすら言い切れなくなっている。


「なによ、照れちゃってー。まあ、うまくいってるならいいのよ。あ、そうそう、これ見て!生徒が作った文化祭のポスターなんだけどさ――」


話題が移ったのをいいことに、わたしはほっと胸をなで下ろした。

だけど、心の中のモヤは、消えない。


“うまくいってる”って、なんだろう。

わたしたち、今は本当に“うまくいってる”の?





帰宅すると、來はリビングで本を読んでいた。

最近、來はよく家にいる。


それ自体はうれしい。

でも、家の中の空気が、少しだけ変わったのも事実だった。


ぎこちない沈黙。

どちらからともなく話題を探しては、また言葉が途切れる。


今までは、たとえ沈黙でも気まずくなんかなかったのに。

お互いに相手の気持ちを探り合って、どこまで近づいていいのか、まだ答えが出ないまま手探りをしている。


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